Mikiyoshi1986

望郷のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

望郷(1937年製作の映画)
4.2
本日5月17日はフランス映画界の名優ジャン・ギャバンの生誕113周年!

ジュリアン・ドュヴィヴィエ監督とタッグを組み、着実にスターへの階段を登り詰めていったギャバン。
その中でも名実ともに人気の高い「望郷」は彼の出世作に相当し、更にはフランス古典映画の代表作にも数えられる名作であります。

ギャバンの大人の色気、渋さ、かっこよさ、女性に対するパリ仕込みの情熱的な愛、そして時折見せる子供っぽさなど、
とにかく大人の魅力に溢れた男性像を彼は見事に体現してくれます。

当時フランス領だったアルジェリアのアルジェを舞台に、裏社会の親玉ペペをギャバンが好演。
迷宮のように入り組んだ要塞街カスバに潜伏して警察の追っ手を交わし、カスバの住人たちにも愛され助けられながら人望を集めるナイスミドル。

そんな彼の前に故郷フランスから観光に訪れた美しい女性が表れ、彼は彼女に強く惹かれていきます。
それは彼女が纏った宝石よりも、その美貌よりも、彼女を通して故郷フランスへのとてつもない郷愁に駆られたからなのかも知れません。
故郷フランス・パリを象徴する女と、異国に囚われ続けるカスバを象徴する現地の情婦。
この二人の間で揺れながらも、彼の魂を船に預けたラストは何度観ても素晴らしい名シーン。

「望郷」という邦題をつけたセンスにも脱帽です。

そして本作と同年にジャン・ルノワール監督の「大いなる幻影」に出演したギャバンは、俳優としての地位を不動のものにしてゆくのでした。
Mikiyoshi1986

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