ミシンそば

黒い神と白い悪魔のミシンそばのレビュー・感想・評価

黒い神と白い悪魔(1964年製作の映画)
3.5
“シネマ・ノーヴォ”その人たるグラウベル・ローシャ初挑戦作品。
なかなかに宗教的な、と言うか神話的内容をカルトで包んだ肉で肉を挟んだ最高にハイカロリーなハンバーガーのような映画。
白黒の力強いの絵力と、少ないけど来るときはガッと来るBGM、予算の都合で安っぽくもある殺戮シーンと言った要素が、静かだけど随分流れが躁だなって自分に思わせる。

搾取の権化たる地主は悪として、自分を特別視して略奪や凌辱、そして殺人を平然と行うカルト集団も義賊気取りの阿呆な山賊も、どれだけキレイごとを並べ立てようとも「さっさと死ね」と言う感情しか向けられない。
主人公らがカルトに入信して間もないころの修業的なシーンはポカーンとするのみだが、人はやっぱり正しいことよりも自分が信じたいことを信じる安直な生命体なんだなってのが素直な感想と自分の抱く諦念でもある。
ブラジルにとっての正義の無い時代(1930年代後半ではあるらしい)ならば尚更……人の心がすさむとき、そういう害悪思想が栄えるのはいつの時代も同じこと。

ローシャはそれを、神話のように高らかに、深夜テンションのような「変さ」で語っていた。