Yutaka

チャイニーズ・ブッキーを殺した男のYutakaのレビュー・感想・評価

4.8
完璧。カサヴェテスの良い所が存分に詰まった傑作。個人的には彼のフィルモグラフィーの中で大名作『ラヴ・ストリームス』の次に好きな作品となった。
フィルム・ノワールとは言えども、このジャンルに特有のニヒルなスカしの空気感は無いので、ノワールと聞いて観て戸惑った人はそういう事。カサヴェテスはスカしを更にスカす事でジャンルに隷属する規範を裏切り、独自の映画を撮る。
ここで描かれるのはファム・ファタールに振り回されるキザな男の物語では無く、ストリップクラブという、世間から低俗に消費されるイロモノなコミュニティに擬似家族を作った男の物語という、いつものカサヴェテスのようなテーマ。
Mr. Sophisticatedやストリッパー、そして彼等が演じるエド・ウッドレベルの少ミュージカル。そしてそれを演出するオーナーのコズモ。そこには愛しかない。周りから見たらくだらないものや、社会的に弱いもの達を愛すること。生活を愛するということ。TEAM TOMODACHI
異形な擬似家族物語にリンチ好きな自分はヤられたけど、映画全体のルックもとにかく最高。特に思ったのはカサヴェテスの階段のショットのカッコ良さ。『フェイシズ』のラストがそうだけど、今作は踊り場から舞台指示をするコズモと行き交うストリッパーたちを撮ったハイアングルのショットが良すぎた。クラブ内のライティングも超カッコいい。
家族とストリップ、時々犯罪。
Yutaka

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