チェコから来たシングルマザーの移民セルマはアメリカの工場で働いている。彼女の唯一の楽しみはミュージカルで、サークルで『サウンド・オブ・ミュージック』の主役・マリア役として練習している。しかし息子の12歳の誕生日にも何も買ってやれないほど困窮していた。
そんなある日、大家のビル夫妻と、同僚のキャシー、セルマに恋するジェフの4人が息子に中古の自転車をくれる。感謝するセルマ。
しかし彼女には実は大きな秘密があった。彼女は視力がだんだん失われていたのだ。そして息子も12歳までに手術を受けないと同様に失明してしまう。息子の手術のためにお金を必死でためていたのだ。ところがある日…というお話。
わたしがこれまで見た中で、もっとも魂を揺さぶる映画だった。「悲しい話はイヤ」という理由でこの映画を見ないのはもったいない。たしかにどう転んでも悲劇だが、最後にわずかながら希望はあるのだ。
ポスターデザインで北欧の幻想的な話だと想像していたらまったく違っていた。
まず舞台はアメリカ。そして演者たちのリアルな演技とハンディカムを使った映像手法もあいまってドキュメンタリー風になっている。
ミュージカルシーンも5か所ほどあるが、話のながれをぶったぎる長いものではなく、とても短く端的で、ストーリーに調和したものになっている。そして、この悲しいストーリーが創作であることを思い出させてくれ、観客の苦しさをやわらげてくれる(時もある)。
しかしこれを映画館で観た人は心が打ち震えただろうなあ…
超オススメです!