鬱映画として賛否両論あるのだが、セルマの人生の物語としては聖歌をもって葬送するべきであろう。
彼女の愛情は理解されずに足蹴にされ、どうしようもなく報われなかったのだろうけれど、彼女は最後まで息子への愛情を示し続けたのだから。
「彼女の行動が愚かしすぎて理解できない」
それはそうだろう。100人に99人は完全な失明の恐怖に怯えることはないのだから。その恐怖と添い遂げた彼女の選択に、貴方自身の感覚を押し付けてはならないよ。
勿論ジーンの一時の絶望を無視してはならないが、しかしそれでどうなるのか。将来ジーンが失明したなら、第二のセルマにならない保証がどこにある。どん詰まりもどん詰まりの袋小路の中で、彼女は彼女の最良の選択をしたのだ。
この物語はジーンにとっての最後から二番目の歌なのだ。彼が希望を持ち続けるならば、セルマは永遠に終幕を迎えはしない。