dita

しとやかな獣のditaのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
4.5
団地の一室、覗き窓。透けて見えるは人の欲。貧乏暮らしはまっぴらと、手を変え品変え金を食う。下には下があるように、上には上がいるもんで、食ったつもりが女に食われ、気付いた時には檻の中。

前髪垂らして人垂らし、惚れたあんたが悪いのよ。長い階段上った先に、わたしとあの子の幸せ求め、上がるためなら何でもするわ、たとえ心を失くしても。

ということで、あんな時代もあったねといつか笑って話せることなんてこの家族とあの女にはきっとなくて、一度堕ちたどん底に二度と堕ちないように終わりなき階段を上り続けるんだろう。息切れに気付かないまま見えない幸せにすがり続けた先にある誰かの不幸せを知ったところで、しとやかな欲望にまみれた獣の目はすべてを吸い込んで輝きを増していく。人生に必要なものは欲望と向上心、 それとありったけのお金です。あぁこわいこわい。

にしても、何回観ても「あやや綺麗なぁ…」ってなるし何十回観ても「なんやこの構図は…」ってなるし何百回観ても「おもろいなぁしかし…」ってなるし何千回観ても「船越顔色悪すぎやろ!」ってなるよね。日常が映画という芸術になるお手本だと思う、参りました。最高でした。
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