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反撥のkouのレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
4.5
《狂気と美しさ》
多くの映画に影響を与えたとされる傑作。ロマン・ポランスキーらしい現実と幻想が混同していく様、そしてその混沌が次第に大きくなっていき、取り返しのつかないところまで進む。悪夢のようだった。その絶望的なラスト、見ている側の心をなでるような展開に流石というしかない。素晴らしかった。

主人公キャロルは性への嫌悪感から男に襲われる夢を見るようになる。次第に精神的に追い詰められていき、精神が壊れていってしまう。彼女の潔癖さ、救いのない純粋さというのは恐ろしく、それでいてどこかエロティックだ。

狂気と美しさの同居したような映画でもある。なんてことない日常に満ち溢れた嫌悪感、耳障りな音やうさぎの丸焼き、芽の生えたジャガイモ、亀裂という、様々な要素は、現実と地続きに狂気的な要素を深めている。それはどこか切迫した恐怖感を呼び起こすのだ。ロマン・ポランスキー監督を表す映画ともいえるかもしれない。恐ろしく、素晴らしい映画だった。
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