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ヒトラー 〜最期の12日間〜のとぽとぽのレビュー・感想・評価

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)
3.5
決して愛することのできぬ君主の最期へのカウントダウンを淡々と綴りながらも強迫観念的。ブルーノ・ガンツの熱演で描くヒトラー最後の日々ーーーーヒトラーは最後の最後まで、死んだ後でさえ糞野郎でした。ハイル総統、ナチには関わるな。何より作り手の本気度が半端じゃないから見ていて息が詰まりそうになる、苦しくなる。数えきれぬほどの爆撃と銃撃、流れる血とほぼ官邸地下要塞・建物内で展開される二時間半。滅び行く帝国、散りゆく人々の最後の姿を克明に捉えている。歴史の勉強になるばかりか人間への洞察にもなる。そして如何に周りがヒトラーとナチズムに心酔していたか(という点で彼のスピーチの巧さや操心術というかカリスマ性みたいなものは認めざるを得ないかも)。ここまでヒトラーが色んな人の心の中で大きくなると、その状態で敗けを認めるって大変だ。『ウィンストン・チャーチル』のように若い秘書をストーリーテリングに組み込んでいる点など含めて、冒頭のほうは案外チャーチルと似た考えもあったのかもと思ったけど、でも決定的な違いがある。それは国民を大切に思う気持ちの無さ。「国民の運命」「若者の使命」何様だよというエゴ、自惚れ、付け上がりが、国民こそが国の未来であるという真理を遠くへ追いやる。側近の女性たちには優しいとしても、極限状態下でもこれほど不愉快極まりないか。敗北は直ぐそこまで来ているのに、それでもなお裏切り者と情け容赦なく仲間を殺すか。今は亡き総統の幻影に惑わされてまで、市民の命を何だと思っているんだ。権力者と大人・老いぼれの欺瞞と身勝手さに振り回されて未来を絶たれるなんて御免だ。愚かしく虫酸が走るよう。日本も当時はこうだったのかな、当然だけど戦争なんて最悪だ。当時のドイツに生まれなくてよかった。この作品の圧倒的出来を見てしまうと、この監督がアメリカに呼ばれて作った『インベージョン』は何だったんだと思う。

「降伏を禁じる、君を含む全将校に」
「私生活ではお優しい、一方で冷酷な言い方も」
「秩序を回復せねばならん」「降伏などとんでもない!」「まず食え、いつでも死ねる」
「我々SS(親衛隊)は総統と一心同体だ」

「若いというのは言い訳にはならない、目を見開いていれば気付けたのだと」
TOMATOMETER91% AUDIENCE94
Downfall is an illuminating, thoughtful and detailed account of Hitler's last days.
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