天国のような金色の麦畑にぽつんと建つ家々は老朽化で今にも崩れそう。そこでは誰もが傷ついていて病んでいて往時の記憶だけがその生存を支えているように見える。何が現実で何が妄想なのかよくわからないまま一人また一人と理由もわからず死んでいく。本当に死んだのかすらわからないぐらいだ。吸血鬼は本当にいたのだろうか?人さらいの黒い車は実在するのか?後年、フィリップ・リドリーは妄想の父親と対話する男の映画を撮ることになる。
イノセントで残酷で、優しくも痛々しくて、夢と悪夢の境目の消えてしまった、フロンティアの夢(古びたモリが象徴するのは『白鯨』だ)などとうに潰えた90年代アメリカ片隅の、少年時代の終わりと、小さな世界の終末のお話。傑作カルトだ。