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蜘蛛巣城のnekosukiのネタバレレビュー・内容・結末

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

"シェークスピア”原作「マクベス」のリメイクの中でも黒澤監督の「蜘蛛巣城」は海外で特に評価が高い。

舞台を日本の戦国時代に置き換え、能の様式を取り入れた映像が斬新だ。
能面に似せた表情や畳を摺り足で歩いたり立ち居振舞いの所作が美しい。

豪放に見えるが根は小心な男が妻にそそのかされて主君を謀殺するが、罪の意識から次第に心の均衡を崩し、精神を病んで行く。
幻覚から、手のひらにこびりついた見えない血を洗い流そうと必死に手を洗う仕草を繰り返す"山田五十鈴”の表情は鬼気迫るものがあった。

演技をする上で役者の動きを妨げる重い鎧兜を軽量化して役者の負担を減らしたり随所に監督なりの工夫があったと聞いた。

"三船敏郎”が無数の弓で射られるクライマックスは弓道部の学生を多数配して、四方八方から飛んでくる矢に恐れおののく迫真の演技を引き出している。

実際に"三船敏郎”の恐怖の表情は作り物ではなく、本心から出たもので心底怖かったそうだ。

この件で"三船敏郎”は監督に腹が立ったもののシラフでは文句が言えず、酔った勢いで監督の家の前までは行ったが結局は何も言えなかったとか。
これまで何度もタッグを組み、気心が知れた者同士の微笑ましい(?)エピソードだ。
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