チョマサ

蜘蛛巣城のチョマサのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
4.0
午前10時の映画祭で4Kデジタルリマスター版を観た。
u-nextで一度見ようとしたんだけど、セリフが聞き取れなくて断念した。今回の4K版はセリフも修復されて聞き取やすくなっていた。(それでも全部聞き取れるわけではなく、伝令が必死に走ってきて話すところなんかは、行きも絶え絶えだし早口だから何を言ってるかわからない。この場面は劣勢なのが表情とかで分かるから聞き取れなくても伝わってるからいいとおもう。)

映像は素晴らしかった。物の怪の婆さんに遭遇する場面は、婆さんの白い姿が鮮明になって、怪しさがかなり増していた。三木の幽霊が出る場面も白いメイクが鮮明になってこの世の者でない感覚が伝わってきた。この白さがすごく良かった。

映画の話をすると、たぶん黒澤明唯一の怪奇映画なんじゃないかと思う。
物の怪の婆さんそのものや婆さんが現れて消えるシーン、骸骨が埋もれている場面や黒い鳥といった美術が不吉さを出した上に怪奇っぽい。予言を受けてその予言が本当になっていくという筋からしてホラーっぽい。
冒頭の、城跡を写しながら昔蜘蛛巣城があったことを合唱で伝えるのも怪談の語り口と思う。

能の影響があるのは聞いたことがあったけど具体的には分からなかった。それが河出書房から出た文藝別冊黒澤明で野村萬斎が能と狂言の影響があることを話していて、それを読むと人物造形でもかなり影響されてるのが分かって、想像以上に影響があったんだなと思った。『乱』と似てると思ってたけど、この能の影響が共通してるから似てると感じたのかもしれない。

山田五十鈴の演じる奥方が、出たときから病んでるようにしか見えなくて怖い。
あと、なんでこの女を嫁にしたんだろうと思ったけど、物の怪に嫁も化かされてるのかなと思うほど、どこか暗いし怖いし凄みがあった。

あの城のセットも規模が大きく、後年の『乱』よりもすごい出来な気がする。
撮影もすごくて、森の中を走るのを木をなめして遠くから撮ったり、走ってる馬の前から撮ったり(これがかなり近くて
、しかもスピードも速いのでどうやって撮ったんだろ。)すごい。

森が動く場面は大して良くなかったけど、物の怪の婆さんが消えるトリック撮影や首に矢が刺さるシーンのほうがどうやって撮ったかかなり気になる。
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