TAK44マグナム

死霊の罠のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

死霊の罠(1988年製作の映画)
3.7
元気の良すぎる赤ちゃん、生まれました!


邦画初の本格的スプラッター映画として公開された、池田敏春監督、小野みゆき主演の和製ホラー映画。
公開当時、すでに「ギニーピッグ」シリーズなどのグロリンチョなホラー作品がニッチな層に受けていたと思いますが、劇場公開を念頭に置いた物語性のある劇映画とすると初めてに近いかもしれませんね。
何か他にもあったと思うけれど。


深夜テレビでキャスターをやっている名美(という役名からして脚本は石井隆です)の元へ一本のビデオテープが届きます。
それを観てみると、なんと拘束された女子の目ん玉をえぐったりする拷問ビデオだったので吃驚!
しかし、番組のネタにも視聴率低下にも困っていた名美は、スタッフを連れてビデオに映っていた場所を訪れます(カーナビがまだ無いのか、わざわざビデオに看板やら目立つランドマークを撮影して誘導しています。いまならグーグルマップで一発です)
それがどんなに愚かな行為かを知らずに・・・


前半は、謎の男によってスタッフたちが順番に殺されてゆくスラッシャーテイスト。
やっぱりエロも必要だろということで、超人気AV女優であった小林ひとみが濡れ場を披露、直後に豪快な串刺しをくらって殺されてしまいます。
そこからは首チョンパやワイヤーで首絞めからの首折れ、ブービートラップによる斬殺と、小野みゆき以外は早々に全滅です。

そこからの後半は趣がズバッと変わって、モンスター襲撃系にチェンジ!
サイコ、オカルト、SF・・・なんでもござれのごった煮状態!
驚愕のどんでん返しで小野みゆきを苛め抜き、もともとルックスからして強そうな小野みゆきなので当然のごとく反撃を開始・・・するのかと思いきや、そんな単純には済まない展開が待ち受けているのでした。

ものすごく昔にレンタルして観て以来、久しぶりに気になって調べたら某サイトに全編がアップされているではありませんか。
少々、気兼ねしながらも当時はレンタル代金払って観たという言い訳を自分にきかせて(汗)何十年かぶりに観てみました。
するとどうでしょう。
細かいところは忘れてましたけど、意外とおぼえていましたよ。
一番覚えていたのがエッチなシーンというのはアレですが、ほら、当時はまだ若かったから!

・・・それはさておき、テンポの良い前半と比べて後半はやや冗長。驚かしもクドい。
そういった意味ではバランス感覚が少々おかしいかも?

しかし改めて観てみると、なんとも露骨なマカロニホラーへのリスペクトぶりに痺れますねえ。
どこかダリオ・アルジェントっぽい。
蛆虫おちてくるし。
後半からはカナディアンと言うかデビット・クローネンバーグ風味かな?
いや、ネタ元はヘネンロッターかもしれない。
何にしろ、全体的にグチャグチャとした粘着質な意匠が気持ち悪くて良い感じ。
おっと、音楽はジョン・カーペンターをいくぶん明るくしたようなホラーサウンドで、ここぞというところではサスペリアっぽくなる。

光と影を利用した画づくりがこれまた恐ろしくも美しく、美術関係も凝っているので、そこらへんの廃墟を使って撮っている低予算映画とは(安っぽい花火なんかも使われますけれど)途中から思えなくなってきます。
予算を凌駕するセンス!

特殊効果もまずまずで、特に目玉をブスリ!は、やり過ぎなぐらいにレベルの高い職人仕事。
血糊は明るくて作り物めいてしまっていますが、ヌメヌメなモンスターの造形などは概ね良好であります。

とにかく海外のホラー映画の雰囲気をだすことに全力投球だったのではないでしょうか。
そこに当時の熱を感じます。
何事も模倣から始まりますからね。
但し、模倣で終わってしまったら仕方ない。これをいま観てもあまり古臭く感じない(勿論、VHSテープだったり、携帯が無いなどはありますが)という事は、逆を言えばこういった和製スプラッターホラーがそんなに進化していないのではないかとも思えるわけで、それはどうなのかな、と。
模倣の域を越えた作品との出会いが、はたしてコンプライアンスが煩くなったこの国で果たせるのであろうか?
久しぶりに本作を鑑賞した後、ふと、そんな思いが頭をよぎりました。


あ、そうそう、ほんのちょい役なので頼まれ仕事なのでしょうけれど、島田紳助がテレビプロデューサー役で出演していますよ。
いまは究極の遊び人らしいですね。なんとも羨ましい限り。


*期せずして、これをアップした2/23が池田敏春監督の誕生日でした。何かの力が働いたのかな(苦笑)


レンタルビデオ、動画サイトにて