九月

恋の秋の九月のレビュー・感想・評価

恋の秋(1998年製作の映画)
4.4
秋は一番好きな季節。涼しくなった時期を想像していたけれど、まだまだ暑さの残る秋のローヌ渓谷の風景が広がっていた。

娘の結婚式を控えたイザベルが、当日振る舞うワインを、ぶどう畑を持つ友人のマガリに注文し、彼女を式にも招待しようとするところから物語は始まる。

イザベルの娘はどうやらマガリのことをあまり良く思っていないらしく招待するつもりは毛頭なさそうだが、当人の意見など気にもしない様子のイザベル。
イザベルにはあらゆる面において豊かさや余裕を感じ、ファッションやメイクもとても好みで好印象を抱いた。でも、あとから振り返ると度を過ぎているように思える言動も多々。本人にその気はなくても、どこにいても誰と何をしていても「主役」に見える人だと思った。
マガリの歳の離れた、もうひとりの友人ロジーヌ(マガリの息子の恋人)にも同じ性質を感じた。

夫を亡くし、子どもたちも皆家を出て行き、孤独を埋めるように畑仕事に没頭するマガリ。彼女を心配したふたりの友人が、相手の男性を勝手に見つけて仲を取り持つ。
友人の友人、や友人の元恋人、など直接的には関係のなかった人たちが、友人を介して(仕組まれて)繋がっていくのが奇妙で面白い。

友人たちに振り回されながら始まる中年の男女の恋がとっても愛おしいのだけれど、ロジーヌもイザベルも紹介相手の見つけ方ややり口が大胆で少し狂気じみていて驚く。
一見ハッピーエンドなのに、どこか含みのある終わり方が意地悪に思えるけど、嫌いじゃない独特な後味。

イザベルの家や庭、彼女が働く本屋、マガリの畑やキッチン、さりげなく映る日常の光景に目を奪われっぱなしだった。

エリック・ロメールを続けて三作観て、自然な映像に惹きつけられる一方で、そこに映る男女の関係性には惑わされるばかりだった。
九月

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