みかんぼうや

二人で歩いた幾春秋のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

二人で歩いた幾春秋(1962年製作の映画)
3.9
「永遠の人」、「二十四の瞳」に続く、木下恵介監督作品3作目。この方、長きに亘り紡がれていく人と人との絆を描く天才なのでしょうね。

本作、一言で言うならば、「二十四の瞳」の“家族絆”版。「二十四の瞳」は“先生と生徒の絆”の物語でしたが、本作は“妻と夫の絆”、そして“親と子の絆”の物語です。

正直なところ、映画の展開や見せ方自体は「二十四の瞳」とかなり似ています(もはや同じフォーマット?)。道路工夫の夫と妻、その息子という貧困家庭の17年の物語を100分強で表現する。小学生だった息子が大学を卒業するまでの間の、人生の喜怒哀楽の思い出がそれぞれスポット的に繋ぎ合わされたような作り。

ただ、このあたりは「二十四の瞳」同様、木下監督の見せ方の巧さで、映し出される映像の裏にある17年の家族の歴史を想起させられるのですよね。結果として、一つの家庭の人生大河ドラマとしてしっかり完成している。まるで17年、この家族と息子の成長を寄り添って見守ってきたような感覚で、最後はその絆に感動してしまうという。

主演は「二十四の瞳」の高峰秀子。彼女の出演作品のレビューでは毎回書いていますが、映画内の十数年や二十数年の時の流れを、なんの違和感もなく(今のような特殊メイクがそこまであるわけでもないのに)、しぐさや声色等で表現してしまう、まさに大女優の凄技を、本作でもまざまざと見せつけられます。

小津安二郎とはまた異なる木下ヒューマンドラマ。先日観た今村昌平の「楢山節孝」よりも木下監督の「楢山節孝」のほうが人間ドラマとして面白い、という声をいくつか聞き、これだけのドラマを作る監督の「楢山節孝」に、俄然惹かれ始めています。
みかんぼうや

みかんぼうや