みかんぼうや

妻は告白するのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

妻は告白する(1961年製作の映画)
3.7
愛という名の狂気。さすが、あの「清作の妻」の増村保造監督×若尾文子主演という究極の昭和ダークメロドラマ。あんなにお美しい若尾文子が最初は魔性の女に見えたのに、最後にはある種の怪物に見えてしまう凄さ。

登山中に夫を殺したと疑いをかけられた妻(若尾文子)の裁判を中心に描く本作は、中盤までは裁判シーンの中に証言に基づく回想シーンを織り交ぜる所謂オーソドックスな法廷物で、思ったよりスタンダードで無難な作品に見えていたところからの後半30分。作品内にどんどん黒い煙が立ち込めるようなおどろおどろしい雰囲気が充満していく。

裁判物ではありますが、この妻は実際に夫を殺したのか殺していないのか、という事実の追及を楽しむサスペンス作品ではなく(タイトルもヒッチコック作品みたいですが)、この妻の女としての情念のたぎりっぷりを目に焼き付ける作品です。つまり、若尾文子のねっとりとした演技を堪能する作品。

「清作の妻」といい「しとやかな獣」といい本作といい、この人ほど凛とした美しさがありながら男をまさに泥沼に引きずり込む演技ができる女優さんって、他になかなか思い当たりません。まさに、そんな彼女の“沼”演技の代表格のような作品と言っても良いかもしれません。
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