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菊豆(チュイトウ)のmajiziのレビュー・感想・評価

菊豆(チュイトウ)(1990年製作の映画)
4.5
チャン・イーモウは商業臭いエンタメものやプロパガンダ作品より、社会における市井の人々を描いた初期作品の方が抜群に上手い。

1920年代、家父長制が命の田舎。

染物屋の旦那に金で買われた後妻の菊豆。夫はジジイで跡継ぎが必要なのに不能で毎日腹いせに菊豆を折檻するクズ。同居する血の繋がりのない甥っ子の天青は、若くて美しい菊豆に惹かれ、また辛い日々の菊豆も彼の想いに気づき二人は距離を縮め…という、どう転んでもきな臭い物語。

染物屋の建屋の空間、色とりどりの長い布など、本来農家の設定である原作を変更してまでの映像への執拗なこだわりは、作品としての出来上がりを見れば、むべなるかなというところ。

どの人物にも寄り添いもせず、突き放した俯瞰的視点は、時代や社会に翻弄される人間の欲望とエゴが剥き出しにされ、嫌悪感と陰気臭さがいっぱい。なのにどこか滑稽にも見えるという不思議。

子役がどの歳になってもふてぶてしく不気味で演出がうますぎる。

やっぱりチャン・イーモウのミューズはコン・リーが至高。

彼女から醸し出される全てが作品の質を高めている。当時の等身大の田舎娘を表現しつつ、隠しきれない美しさと色気。それでいてジジイに悪態付くところなんて下衆丸出しで最高の演技。

血縁や古い因習のしがらみに人生を狂わされる人々の姿が映し出されている作品。
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