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リアル・フィクションのnetfilmsのレビュー・感想・評価

リアル・フィクション(2000年製作の映画)
3.2
 私はいつものようにマロニエ公園で、目の前に座った人の肖像画を描いている。人間の表情は誰だって目・鼻・口しかないのだから一瞬彼らの顔を把握したのち、白いキャンバスに向かい始めるが、どういうわけか冴えない自堕落な絵に客は溜息をつく。私にとって世間との接点は、せいぜい肖像画描きと近くの電話ボックスでの盗聴くらいで、他にやることなどありはしない。新しく気乗りしない絵を描きあげた時、どういうわけか女はその絵を似ていると褒めてくれた。だが彼女はあり合わせのお金がなく、別の方法で支払うと言いながら私をある場所に誘い込む。女の背中を見失わないように着いて行った先には劇場があった。そこには「もう一人の自分」と書かれたフライヤーが貼ってあった。

 男の呪いの言葉に導かれたように私は、延々と殺戮を繰り返す。脂ぎった笑みを浮かべながら搾取しようとする小汚いおっさんも、大人しい私を舐めて恫喝してくるチンピラたちも、戦場で私をののしり続けた醜い上官も、清純さの欠片もない女たちも、全てが憎くて憎くて仕方ない。憎しみの業を背負った私の手に握られた鈍器はただただ私の想像の範疇を超え、無表情で何の感慨もなしに目の前で殺戮を繰り広げる。おまけにそんな私の背中を、どういうわけか女のカメラが執拗に追いかけて来るから、始末に悪いその女の顔を拾った石で散々殴りつけてやった。

 映画はフィクションであり、現実の出来事ではない。「Based On A True Story」と書かれた作品の中にも、真実の中に巧妙に幾つかの嘘や誇張が混じっている。キム・ギドクの映画の中の目を覆いたくなるような暴力も、愚かな蛮行の数々も、全てはフィクションの中の決められた出来事でしかないと感じていた。それ故に彼が現実で引き起こした幾つもの事件は、彼の主張と明確に齟齬が生じたように思えてならない。
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