アキラナウェイ

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.7
もう2月も後半に差し掛かっているけど、ようやく2023年最後の鑑賞作品をレビューする。こちらの作品、昨年末でU-NEXTの配信が終了するとの事で鑑賞。

昔々に観たつもりでいたけど、全く目新しい作品として楽しめたので、きっと観ていなかったのかも。

モハーヴェ砂漠を貫く幹線道路。ドイツから旅行中の夫婦がレンタカーの中で喧嘩をおっ始める。怒った妻ジャスミンは荷物を手に車を飛び出してしまう。彼女が砂漠を歩き続けた先には、ダイナーでありガソリンスタンドでありモーテルである、寂れた"バグダッド・カフェ"がぽつんと立っていた—— 。

冒頭のシーン。
地平線を水平に捉えない独特なカメラワークや細かいカメラ割りが特徴的。やがて地平線を水平に捉えるようになるのは、ジャスミンの不安定な心情が落ち着き始めた事のメタファーだろうか。

空はより深い青。
砂漠は錆びついたような赤。
色彩がまた一際ビビッドな印象。

バグダッド・カフェには、夫に愚痴をぶち撒けて追い出したばかりの女主人ブレンダの姿が。太ったドイツ人の女性が来たとあって、殊更邪険に扱うブレンダ。ジャスミンのスーツケースには詰め間違えた夫の男物の衣服ばかりなもんだから、余計に素性を怪しまれ…。

ブレンダとジャスミン。
国も違えば性格もまるで違う2人の女性。

ブレンダにどんなに冷たい言葉を投げかけられようがドイツに帰ろうとはしないジャスミン。そうか、夫が去った以上彼女に還る場所など何処にもないのか。

夫が残したマジシャンセットで、手品の名人となったジャスミン。閑古鳥が鳴いていたのが、次第に大賑わいを見せるバグダッド・カフェ。春の雪解けのように、ブレンダもジャスミンに心を開いていく。

夕日の空に放たれたブーメラン。
一度は去ってしまったジャスミンも…。

大人の女性の友情、恋愛。

ああ、良い映画だなぁ。

アカデミー賞歌曲賞にノミネートされた主題歌「Colling You」がめちゃくちゃ胸に沁みる。これは名作。