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2/デュオのkabcatのレビュー・感想・評価

2/デュオ(1997年製作の映画)
3.8
仕事が有能でしっかりしている女と、売れない役者でヒモ状態のだらしない男に見えたカップルが、次第に男の精神的不調が女にも伝染して態勢が逆転していくさまを、小さなエピソードを重ねながら描いた作品。ところどころブラックアウトするところなどはジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を思い出させる。二人のシーンを、男の後頭部からや、暗い部屋でなど、表情が読み取れない形で撮影していて、不安感を漂わせている。

セリフのやりとりが非常に自然だなあと思っていたら、脚本がなく即興で撮影され、結末もどうなるか未定だったそうだ。たしかに彼らの関係がどうなるのかまったく予想できず、緊張感のある進行だった。監督のその後の作品である『ユキとニナ』や最新作の『風の電話』などにもその撮影スタイルは受け継がれているのだろうが、この作品と比べると余裕や安定感が格段にある。長編映画デビュー作ということもあり、まだまだ青い感じがした(それは決して悪いことではない)。

最近はいい人や正義感のある人ばかり演じている西島秀俊なので、こういうダメな男を演じているのはとても新鮮だし、多少気負いがあるけれどもいい演技をしている。これからももっとこういう役やったらいいのにな。相手役の柳愛理は最近見ない女優さんだが、自分のなかで何かが壊れていくさまがリアルだった。渡辺真起子や中村久美が端役ながらも強い印象を残している。

サントラや女性たちの服装(ドロテビス!)や髪型がいかにも90年代で懐かしかった。
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