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ソウ4のaのネタバレレビュー・内容・結末

ソウ4(2007年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

・本作は、ジェームズ・ワン監督による『ソウ』(2004)シリーズの4作目であり、監督は、『ソウ2』より引き続きダーレン・リン・バウズマンが勤めている。なぜか今回は、特に中画面用テレビドラマかと思うくらい、人物に寄っているカットがめちゃくちゃ多かった。

・しかし、脚本家であり、ワン監督の右腕であるリー・ワネルは、本作で初めて『ソウ』シリーズを降りている。正直観ていて、本作には脚本家の技量を疑いたくなるような怪しいシーン(前後関係がバラバラとしていて、全体で何が起こっているのかを掴みにくいシーン)がいくつもあったので調べたところ、やはり本作が公開された2007年というのは、ハリウッドで最大規模の脚本家組合によるストライキの期間中であり、この期間に公開された映画は脚本家不在のものが多かった(自分の好きな007シリーズの『慰めの報酬』(2008)も、この期間に丸かぶりだっため、なんとなく前後関係が掴みにくく、ふわふわしている)。そして、リー・ワネル(というか脚本家)の不在もこの一環ということらしいのだ。ストライキをしていた分は無理に公開しなくてもいいので、しっかりとした作品になるまでは何度でも延期をしてほしいと、つくづく思う。

・本作の最初、いきなり始まるジグソウさんの解剖シーンは、当時より大流行中の海外ドラマ『CSI:科学捜査班』(2000)のシーズンで起こるような同様のシーンから映画の印象を遠ざけていくため、意図的に陰惨なものとしているのだそう。同作については自分の母親が大好きなのでたまに実家で観ていたのだが、とにかく司法解剖(?)をして証拠を掴んでいくというもので、確かに本作の冒頭(というか全体の構成自体)が同作に似ていた点はある(ドアップで抜きまくるカットの数々も、海外ドラマを意識させるようなものだ)。というか今調べたところ、そもそも本作のグラフィックスは同シリーズの撮影監督が務めていたらしい。特に本作の画作りがドラマっぽかったのも説明がつき、納得した。

・しかし、個人的な感想として、このシーンには大変感心しました。『ソウ』シリーズ、ひいては海外映画の中でもトップレベルのゴア描写ではないでしょうか。最初に脳を全部開けてしまうところから始まり、もう皮や筋肉も全部見せてくれるというのは、いくらホラーといえども興行収入を落としてしまう要因になるので、案外規制を受ける(そもそも倫理機構によりがっつりカットされるのが定石です)のですが、本作は結構一線を超えている感があります。

・というのも、本作には検視官が解剖シーンのために常にセットにいたらしく、適切な監修を受けていた(という建前を、しっかりと製作陣が作っておいた)らしい。この建前によって、(確か前作もそうでしたが)倫理機構には、一連のカットが「写実的であるもの」と認定されたために、本作は規制を免れたらしいです。写実的とはいえ、端的に、それなりに慣れ親しんだアイコニックなおじいさんの顔面がベリベリと剥がされる体験は初めてだったので、これは味わったことのないグロがあり、このシーンは非常に高く評価しています。例えば、某カニバリズム映画のグロシーンには、実際に動物を殺して食うシーンを断続的に入れることで、観客の不快度が一段と増すという仕掛けを用いたものもありました。結局もっともゴアなものとは、リアルで写実的なゴアと不可分なものなのだと、つくづく感じました。

・椅子に括られた大量のナイフを顔面で押し出すシーン、あのナイフは実は木でできていたらしい。かわいい。

・イワンがハグをしている犬は、バウズマン監督の愛犬チャンスで、『ソウ2』(2005)の公開後に監督が飼い始めた犬らしい。

・総評&感想(ほぼ小ネタはありませんでした)。ソウシリーズのメソッドは、1作目の面白人殺し映画に詰まっていて、以降の2作目と3作目も、程度の差はあれど1作目の盛り込み感と残忍な人殺しの小細工をそのままぶち込んできたわけですが、本作はとにかく殺しの残忍さとジグソウさんの身辺整理に振り切っており、それが非常に良かったです。まず冒頭で、顔馴染みであるジグソウさんが思いっきり解剖されるというアイデアは観客をいきなり集中させるにはピッタリなアイデアで素晴らしかったし、以降のドラマパートも、(若干わかりにくかったのですが)基本的には解剖されたジグソウさんの悲しい身の上話に終始しており、確かにあの後が無い年齢で思いっきり第三者のせいで流産してしまわれたら、一人に復讐するどころでは済まされないくらい社会的にとち狂ってしまうのも、まあわからんでもないな、などと、トンデモ殺人犯に軽薄な同情を寄せるのでした(でも、1件1件ここまで用意周到に殺人ができるなら、それはトリガーが妻の流産であっただけでしょうね)。

・その後の氷の上での耐久や時間制限が二重に装置として作用しているというのは実にクレバーだなと思ったし(時間と強迫観念(行動)を天秤にかけるというのもメタ映画的で素晴らしい)、最後の相打ちからの「実は私が犯人でした」のオチは、1作目の構造をそのまま流用しているという程よいオマージュでちょっと笑顔になりました。あとは、ジグソウがナイフ椅子で復讐を果たすシーンでは、本人が実際にやっているからこそ音源がカセットテープではなく(初めて)生声になっていら部分に、謎にブチ上がってしまいました(?)。実質脚本家不在でミステリー要素がバラバラしていた部分だけ難点ですが、総合的に観ると1作目の次に好きでした!このあと一体どうなるのかも結構気になる、良作な4作目でした。
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