みかんぼうや

近頃なぜかチャールストンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

近頃なぜかチャールストン(1981年製作の映画)
3.4
アップテンポのドタバタエンターテインメントでありながら、ガッツリと社会風刺的メッセージが詰め込まれている、まさに岡本喜八節全開の本作。勢いよく切り替わっていくカメラワークとお笑いのコントのような独特な間合いや台詞回しもやはりユニーク。

シニカルな喜劇は岡本監督の十八番。「肉弾」をはじめ大好きな作品が多い監督です。が、本作に関しては、シュールな設定と詰め込み過ぎ感についていけず、いまいちハマれませんでした(先日観た「ダイナマイトどんどん」ほど苦手ではなかったですが)。

物語の設定は、婦女暴行未遂で逮捕された不良少年が、留置所で「ヤマタイ国の閣僚」と名乗る6人の非行老人と出会い、気づけばその老人たちとある一軒家で共同生活を始める、というもの。お互いを「総理」、「外務大臣」、「大蔵大臣(懐かしい)」などと呼び合う老人たち。不良少年も「労働大臣」に任命され、その生活に溶け込んでいきますが、その生活のなか、ある事件に巻き込まれていきます。

設定的に十分面白そうなのに、私が本作にハマれなかった理由は、あまりにも色々な形で社会を皮肉るメタファーが詰め込まれ混在しているように見え、他の喜八作品に比べて、核となるメッセージがかえって分かりづらく、全体的に説教臭く感じてしまったためです。

本作で描かれているのは、戦争を経験した世代の愛国心だったり、社会からの孤立感だったり、戦後生まれの若者たちとの価値観のギャップだったり、欧米への憧れに対する抗いだったり・・・様々な角度から社会に対する批判や皮肉が語られているのは分かるのですが、それを「ヤマタイ国」という独立国家的コミュニティや、欧米文化を象徴するチャールストンなど、メタファーのてんこ盛りで描くので、シニカルさが満腹を通り越して、食傷気味になってしまったのでした。

もともとの味が薄味であれば、多少ボリューミーでも大丈夫なのですが、喜八監督の味付け(皮肉)は元々が濃いので、最初はおいしくても、後半はちょっと飽きというか食べ疲れがきちゃいますね。

個人的には社会(戦争含む)に対する皮肉は「肉弾」くらいがちょうど良く、エンタメとして振るのであれば、「殺人狂時代」くらいまで振り切ってくれたほうが・・・という感じ。

本作は喜八監督好きでも意外と評価が分かれているようですが、私にはちょっとくどい作品でした。
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