真田ピロシキ

HOUSE ハウスの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)
3.0
これぞカルト映画。色々ぶっ飛びすぎてて言葉が出ない。大林宣彦の劇場映画デビュー作でCMディレクターの実績しかなかった大林が100%作家主義を発揮させた怪作。GOサインを出した東宝が凄い。東宝の偉い人は仕上がった映画を見て青褪めなかっただろうか。当時の映画少年少女に影響を与えたのは想像に難くない。古い世代ではこんなの認めんって反応も多かっただろうなあ。

Jホラーの元祖であるらしいが全く怖くはない。布団に襲われたりピアノに食べられても笑っちゃうでしょ。生首に襲われる所のファニーさよ。これはどう見てもコメディ、そしてファンタジー。映画を通して全く普通に撮られておらず、まだ怪異が起きていない序盤ですら堂々と出てくる書き割りの背景。そんな舞台じみた演出のおかげか、主演のアイドル演技やオシャレとかファンタといった珍妙な名前で呼ばれるキャラクターの設定もこの世界では正しく感じさせられる。映画が半分くらい過ぎたらエンジンがフルスロットル。至る所で合成やアニメーション、サイケデリックな色彩の暴力と目を休める暇がない。先生が家に向かってる最中の本筋とは無関係な所ですら寅さんやトラック野郎のパロディで退屈な瞬間を作ろうとしない。また先生が出発しようとして事故に遭う下りはCMっぽくて、大林監督が劇場映画初監督に当たってそれまでのキャリア・スキルを総動員してやろうとした感じがする。それで本作における大胆な合成のような演出が晩年の『花筐』にもあったのを思うと大林監督の人物像が窺えるようで面白い。自分の過去を出し惜しみしない人だろうか。

主人公たちの名前はオシャレ、ファンタ(ジー)、クンフー、メロディ、ガリ(勉)、(スト)マック、スイートの美少女7人。ファンタは飲料の、マックはマクドナルドのダブルミーニングというアニメでもつけないマッドな世界観。名前の通り動くシーンの多いクンフーがお気に入り。ヌードシーンもあるが倫理的に大丈夫だったんだろうか。必要とも思えないのでどうにもロリコン性を感じさせられてしまった。そういう歪さもカルト映画のカルトたる所以か。