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キネマの天地の8637のレビュー・感想・評価

キネマの天地(1986年製作の映画)
3.3
「キネマの神様」の予習まがい。
始まってすぐ、これは未見の「蒲田行進曲」ありきの映画だったか...と悟った。監督が違うけど、松竹の撮影所でその物語は繋がっている。

数シーンの撮影現場を通して映画撮影の極意を伝える、そんな山田洋次的演出が満載だった。作品内で映されるサイレント映画が面白く、「キネマの神様」もこんな感じなら良いなと思えた。
中井貴一がとにかく若くて、今とはまた違う優しさがある。それでもクレジットでトップに名を刻む渥美清。ただ単にコメディアンなのではなく、そこに都会に染まる娘を案じる哀愁があって良い。

本当の映画は、人を死の寸前から立ち直らせる程に素敵らしい。現代のように匿名かつ細かな批判が起きなかったあの頃だからこそ、どんな映画でも本気で楽しめていたのかもしれない。

映画館で菓子が売られるスタイルは、新宿武蔵野館で一度だけ体験した事がある。あの時代とは違って小柄で活気のないスクリーンだったが、風情があった。


追記:今や映画をあらわす"Movie"という英単語、もとは"Moving Picture"、動きだけのもの(=無声映画)の略称なので正確に言えば"Talkie"(Talking Picture=有声映画)の方が正しいのだが、塾で社会を教える先生が「でもトーキーってダサいからね...」って言ってて何か納得してしまった。
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