Tully

第三の男のTullyのネタバレレビュー・内容・結末

第三の男(1949年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

モノクロだからこそ映し出される光と闇のハイライトの美しさ。モノクロだからこそ生きるシャープな構図。緊迫感。素晴しかったです。思ったよりお話はずっと複雑で微妙でした。戦時下のウィーンという、いわば無法地帯。無国籍状態で政治も秩序も混沌としており、善も悪も無い。あのダークでアナーキーな世界観は今見ても全く新鮮で、寧ろこの映画こそがその後のサスペンス映画に大きな影響を与え続けたのだろうと思わずにはいられませんでした。多くのサスペンス映画の主題になってきた 「善と悪」 「友情と正義」 或いは 「男女の心の機微」 といったものが心憎いほど描き切られており、この時代の映画としては実に完成度が高いと思います。ただ、現代女性としては。人でなしハリーへの愛を最後まで頑なに貫くアンナがどうにも理解し切れなかったです。愛とは善悪では割り切れないもの、というのも解らないではないのですが。あの頑固さが彼女の魅力でもあるし、それがなければあの有名なラストシーンも無い訳なんですけどね。そしてあまりにも有名な音楽。映像と合わせて観ると本当に素晴しかったです。観覧車のシーンもスゴイ。何度でも観たくなる名作には違いありません。
Tully

Tully