第二次世界大戦直後のウィーンを舞台にしたサスペンスであり、フィルム・ノワール。アメリカから、当時、米英仏ソによる四分割統治下にあったオーストリアの首都ウィーンに友人を訪ねてきた売れない西部劇作家のホリー・マーチンス(ジョゼフ・コットン)。しかし、来てみるとハリー・ライムの葬儀が行われ、怪しい謎の人物たちが次々に登場、そして国際警察からも疑いの目が向けられる…。冒頭のアントン・カラスのツィター演奏によるテーマ音楽や、ハリー・ライム役のオーソン・ウェルズの印象深い演技に久々に引き込まれました。
淀川長治さんは自著の『映画ベスト1000』の中で、「これは見事なキャロル・リードの名作ですね。で、これは私は観てあまり立派なので驚きました、と同時に少し憎らしくなった。本当に映画の教科書ですね。脚本もキャメラも監督自身も、見事なキャロル・リードの感覚が出てワンカットも無駄でない、見事な映画自身の教科書、そう思いました…」等と記している。第二次大戦後の時代背景や闇商人の存在をテーマにして、光と影を効果的に用いた映像美。何度見ても素晴らしい作品でした。
