頭に櫛挿した織田政雄と桜むつ子の床屋最高、明治のチョコもキャラメルももらって桑田のホームラン記事も読みたいってアツカマ氏すぎる大木実。当然ひづるはこんなとこ出てくしかないから修学院でごきげんよう（ゴキ様って言ってなかった？）プリンス探してあそばせ。新聞部の石濱朗に自動車部の杉浦直樹、慈善事業の左官娘・芳村真理。初等部から上がってくるのはスリルで手癖が悪いけどどうせマダムになる女。ホステスやって永井さんにシガレットケース買わせて従兄弟のふりした大木実（シンナー顔にかけてそろばん弾いてろだっけ？なんかすごいイイセリフ言いまくってた）にウィンウィンで学費援助させていいぞー都会の坊&嬢に負けるなもっとやれ、プリンスから金の気配とイケそうな空気に目は爛々、小鼻がふくらむひづる最高。しかしグズな石濱にヤキモキ、しかも軽井沢でセックス覚えたてのグズに不安が募れば即懐妊。タカクラのベルで大飯食って収まるとこ収まったひづるはどこでも逞しくやってけるしこれで終わりじゃないのが人生。20年ぶりに…って双子デキる桜&織田政も、歌舞伎座の食堂で私は没落貴族…ってスイッチ入れるひづるも最高。

1959年製作公開。原作津村節子。脚色山内久。監督中村登。

冒頭、当時の皇太子明仁親王と正田美智子の結婚パレードが映し出される。それを床屋の待合席で観ているその店の娘高千穂ひづる。東京の美容師学校で勉強するんだ、という旅立ちの日。両親はしっかり勉強するんだよ、と送り出すのだが。

実は高千穂ひづるの希望は玉の輿。何で私が汗水たらして働かかきゃならないのよ。高貴な方々の子息とお知り合いになって嫁入りするんだわ。そして楽して暮らすのよ。と、その昔、皇族、貴族の子弟が巣くっていた修学院大学を受験し合格、入学したのです。無論、両親には内緒。美容学校の寮に入ると言って出てきたのですが、以前お店にいたお弟子さんのアパートに転がりこんでいるのです。そのお弟子さん今はキャバレー勤めで、高千穂ひづるも学費生活費のためにキャバレーでアルバイト。

わたしがものごころついて観ていた頃の高千穂ひづるは、誘惑されてよろめいて帯を解かれる人妻の印象しかなくて、いや、実際にそんな作品に出ていたのかどうかも分からぬがそんなイメージの女優さん。ですが、ここではおきゃんを演じております。

狙いを定めたのはホテル経営者の息子杉浦直樹、精密機器会社の息子石浜朗。彼らふたりも高千穂ひづるにぞっこんで、もはやどちらに転んでもわたしには幸せな人生が待っているんだわー、と絶頂感！！

でも、彼女が盛装の帯を解いた相手は実は、とそんな話。

芳村真理と大木実の焼き鳥談義が愛おしい。

神保町シアター　生誕110年記念 映画監督・中村登――女性讃歌の映画たち にて

• #手癖の悪いご令嬢

とにかく主人公のクソ女っぷりがやばい。実家が床屋であることにかなりのコンプレックスを感じて、美容師学校に行くと偽りながら金持ちが集う大学(学習院がモデル?)に入学。しかもその目的は金持ちの息子に嫁ぐためで、更には男を勝手に格付け(これは男性側もよくあることなのでちょっと面白かった。)自分を少しでもよく見せようと金がないのに高いものを身にまとったり、バイトを自分勝手な理由ですぐに辞めたりとにかくやりたい放題。「世の女性たちはこういう女性になってはいけませぬぞ」っていう啓蒙映画だとは思うんだけど、あまりのクズっぷりに途中から逆に愛おしくなってしまった。
観てる間は演出、話ともに凡庸だなあと思ったけど振り返ってみるとかなり狂ってる。最後は飯を食うとこで終わるんだけど、まあ旨そうでよかった。

• #2017_kankan_boy