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パリ、18区、夜。のあのレビュー・感想・評価

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)
4.0
白人の中の黒人、黒人の中の白人、ヘテロの中のホモ、若者の中の年寄り、そしてパリを徘徊するルーマニア人。この異物感というか、いどころのなさに「ショコラ」よりも強烈なドゥニの作家性を感じる映画でした。

ドゥニは血統的にはフランス人のはずですが、なぜかルーマニア人の彼女に自分を託しているように見えるところに、「ショコラ」でも見せた幼少期の静かな疎外感を感じるとともに、まだ小さい頃から自分の感情を属性の違う様々な人たちの中にも見出してきたんだと思わされました。そういう意味では、ドゥニは同世代の中でもかなり精神年齢が高い方なのではと思ったりします。

ただ、登場人物が多い割に、雰囲気に終始している狭さは感じました。決定的なのは、老女の殺人が徐々にダイガのばあちゃんの外堀を埋めていく怖さがあるにも関わらず、そこら辺の緊張感があまり感じられないところだったと思います。地平線とロケーションを奪われて、作劇の弱さが顔を出してしまった惜しさを感じました。

ライブのシーンも、「ディンゴ」のマイルス・デイビスを見てしまった後なので仕方がないでしょうが、少々ぎこちなく思いました。あえて画をキメすぎないことでムードを出している感はありましたが、「ショコラ」で母とイギリスの将校が踊るシーンは、画をキメまくっていてもなおムーディーでしたから、単にカメラが迷子になっているようにしか思えませんでした。

特徴的なロケーションの風味を活かすのは得意だけど、一方で普通の場所を印象的に撮るのは苦手なのではと思ったり...
あ