みかんぼうや

誰も知らないのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
3.9
【なぜか避けてきた名作を食らうVol.14】
柳楽優弥が史上最年少でカンヌ主演男優賞を獲ったことでも有名な本作。もちろんその頃から知っている作品でしたが、なぜか作品リリースから20年経つこのタイミングまで観てきませんでした。

観終わって最初に感じたことは、最近の是枝作品と比べると、脚本や演出のエンタメ性は控えめで、ドキュメンタリータッチな表現が多いこと。子供に関わる社会問題を数多く扱いながら創作が多い是枝監督作品の中でも、本作は史実の事件(「巣鴨子ども置き去り事件」)をモチーフにしていることが大きいかもしれません。それとも、ドキュメンタリーディレクターでもあったことから、初期はこのような作風だったのでしょうか?(実は2000年代前半の是枝作品を観るのが初めて)

よって、映画としての“エンタメ的面白さ”よりも、 “ネグレクト”という言葉も“親ガチャ”という言葉もなかった時代に、この事件を通して“誰も知らない”悲しき現実を知らしめ、社会に鉄槌を打ちたかったのだろうと思ってしまいました。

結果として、私自身も、映画としては近年の有名作品(「怪物」、「万引き家族」、「そして父になる」等)のほうが面白いと思いつつ、本作のほうが観終わった後に心にズシリと残るものがありました。実際に監督の思惑通り?本作を観終わってから「巣鴨子ども置き去り事件」についてすぐ調べてしまいましたし。

そして、史実を調べ本作と比べることで、是枝作品の中でも特に救いのない内容の本作のなかにも、柳楽優弥演じる長男や本作の次女に後半起きるある出来事の描き方から、是枝監督の優しさが感じられました。

柳楽優弥の演技は言わずもがなですが、その兄妹役など、子どもたちの演技がとても自然で本当に良かったです。内容が内容だけに、子どもたちにかかっている部分がかなり大きいですから。YOUの演技は初めて観ましたが、良くも悪くもいつものまんまで、逆にそれが本作の役柄には合っていました。

是枝監督作品はまだ6本くらいしか観ていませんが、2000年代前半以前の作品は初めてだったので、今とは色の異なりそうな他作品ももう少し観てみたいと思いました。
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