こなつ

お早ようのこなつのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
4.0
1959年の小津安二郎作品。私にとって小津作品2作目は、フィルマの皆さんのレビューを参考に選んだ。小津作品の中では、一風変わった終始コメディタッチの楽しい作品ということだったが、庶民の何気ない日常を子供の目線で捉えた心温まるものだった。

昭和30年代の東京の郊外、同じような建売住宅が並ぶ新興住宅地を舞台に、そこに住む様々な家族の日常が面白可笑しく描かれている。家族構成や家庭環境は違っても、和やかな日々を過ごしていた。それでも近所付き合いの小さなトラブルに振り回されている大人達。そんな中、子供達はテレビに夢中になって勉強をしなくなる。テレビのある家に入り浸り、親から叱られるとテレビを買ってくれとねだる。そういう光景が目に浮かぶような巧みな会話劇が面白い。戦後の高度成長期の社会の変化が、映像を通して伝わってくる。

林家の2人の兄弟は、ハンガーストライキやだんまりでテレビを無駄と言って買ってくれない親たちに反抗。「大人だって無駄なこと、してるじゃないか!」こんな1人前の言葉を発する子供達だけど、外ではおデコを指で押すとオナラをするという変な遊びがはやっている。近所との交流を温かく描きながら、その時代の子供達のリアルな姿、家族の関係性、戦後の日本が幸せに向かって歩いている時代の庶民の暮らしを軽いタッチで優しく描く小津監督は、やはり素晴らしい。

林家の次男、勇ちゃんが可愛くて面白過ぎる。「アイ ラブ ユー」で虜になってしまった。小津監督は子供を描くのが本当に上手だなと思う。
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