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紅夢のmajiziのレビュー・感想・評価

紅夢(1991年製作の映画)
5.0
1920年代、頌蓮(スンリェン)は父親の死去により大学を辞め金持ちの家に第四夫人として嫁ぐところから物語は始まる。家父長制、一夫多妻の時代。

第四夫人って肩身が狭そうなのに、スンリェンは若さ故の無敵感や気の強さで、のっけから使用人に対してかなり傲慢。

この時代に女性で大学に行けた程なので、元々裕福で超エリートだろうしプライドの高さはよくわかる。だからこそお金の為に嫁ぐことが腹立たしく、怒りを抱えていることも。

嫁ぎ先の家法、正夫人や第二・第三夫人や使用人たちとの力関係など季節が巡るにつれ徐々に理解していくが、しかしそこは19歳の小娘にとって海千山千ばかりの魔窟でしかなかった。

彼女の世間知らずで純粋な人としての心が、女たちの嫉妬や陰謀によって歪められていく有様は寂寥感と無情さにあふれている。

紅を基調とした提灯の光が、旦那が決めた今夜の相手の住まいに灯す印となっており、選ばれた夫人は夜には足のマッサージを受け、翌朝の朝食メニューを決められる権利がある。閉鎖的な屋敷の中で、旦那から寵愛を受け男子を生むことだけが全て。

しかし正夫人にはすでに成人した息子があり、第二、第三夫人たちがいくら踠いて焦ろうとも、勝敗は決しているのであった・・・

美しい映像が悲惨さと残酷さを引き立て、旦那の顔が明確に映ることは一度もなく、また夫人たちの少ない笑顔も嘘でしかない。

第三夫人が連れていかれる屋上での引きの長回しシーンは、スンリェンの視点でもあり、緊迫感あふれる演出が素晴らしい。

幻想的な美と狂気が完成された傑作。
私の中では張芸謀の最高作品。
邦題「紅夢」も原題よりも世界観を表現されていて良い。
早く日本盤のDVD発売になってほしい!
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