ミシンそば

美しき諍い女(いさかいめ)のミシンそばのレビュー・感想・評価

3.5
何度かレンタルしたが、観れず仕舞いだった本作。
エマニュエル・べアールの脱ぎっぷり、描画シーンではほぼ常に乳と尻と陰毛をさらけ出しているが、これがまた不思議なくらいにエロス皆無。
ミシェル・ピッコリ演じるエドワールの画狂老人振りの方が表に出てて、ずっとカリカリカリカリ描いては消ししているから。

非常にランタイムの長い映画で、描画に対してどこまでも真摯(些か真摯過ぎる嫌いがあるレベル)のため、短縮版があるというのも頷ける(何もわかってない連中が、この映画からどこを削ればいいのかを何となくではあるが分かる構成)
何かを得るためには何かを捨てる必要がある。
エドワールは妻を愛しているし、多分本人的にはモデルのマリエンヌにちゃんと向き合っているつもりなんだろうが、画家としての名声を得るためにいろんなものを捨てて来たんだろう。
作中に出てくるある絵の扱いからもそれがよく分かる。
エドワールに限らず、「捨てても、それでも折り合いを付けられない心の溝」が主要キャラ全員に凭れかかっており、人の心の儘ならなさをジャック・リヴェットはよく描いていると思った。

結局あの絵がマクガフィンなのは途轍もなく上手い。