ミシンそば

青春18×2 君へと続く道のミシンそばのネタバレレビュー・内容・結末

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

バックパッカーの年上女性に脳を焼かれまくった青年の、非常に瑞々しい青春の日々を描く作品。
思い出はいつもキレイだけど、未来から俯瞰したら呪縛にしかなり得ない。

大学時代に立ち上げたゲーム会社を乗っ取られて、意気消沈のまま実家に戻った主人公ジミーが18年前に上述のバックパッカーの女性アミから送られてきたポストカードを見て日本への旅を決意する。
電車移動が主体の、珍しい形のロードムービーと言っていいと思う。
効率度外視の旅程で、福島を目指すのに神奈川の鎌倉に行くところは、日本人が置き忘れてきた精神の豊かさだと思う(ジミーはスラムダンクから日本語を学んだって設定。そしてやっぱあそこ撮りに行く人多いんだなぁって再確認)。
異様に色彩の薄い(ただし話が進むにつれて色を取り戻して行く)現代パートと、自分も大分時の流れを感じる過去パートを並行して描写し、映画も旅も進んでゆく。
旅先でいろんな人に出会うのもまたロードムービーらしい(出張で来てそのまま残った台湾人だったり、18歳のチャラ男だったり、ネカフェ店員のフリーター女性だったり)。
過去と並行して描くからちょっと欲張り演出であることは否めないが。

アミの帰国前に「遠い」と言って敬遠したランタン飛ばしに連れていく件の、楕円窓の電車に凭れかかって片耳イヤホンでミスチル聴くやつは、多分製作陣が全員やりたかった、一番気合入ってんだろうなって一目で分かる場面(これを切り抜いたポスターもある程度には)。

アミが病を抱えている、余命いくばくない、現代パートにはもういないことは流石に、トンネルを抜けたあたりから何となく気付いていた(察しの悪い雨穴でもなけりゃ、さすがに気付く)。
そのあたりを語り過ぎな気もするが、そのまま押し切られてこの映画を好きになったまま終わる。
置き忘れてきた青春の後悔に、回り道をしてまた会いに行く。
確かに君へと続く道だった。
(そして、無粋な憶測だが、仮にジミーが過去にタイムリープできたとして、アミに思いを伝えられない結果は変わらないってぼんやりとだが分かりもする)。

余談だが、エンドクレジットに名前が載ってた高橋チョンティチャって、彼女を題材にした短編映画が作られてるあの人だよね?
そしてさらに余談だが、主演の許光漢と自分の生年月日が全く同じだった。