トンボのメガネ

東京公園のトンボのメガネのネタバレレビュー・内容・結末

東京公園(2011年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

いい!好きな映画だ。
退屈と言う感想をチラホラ見かけたが、ずっとワクワクしながら鑑賞した自分は変態なんだろうか?

分かりやすくない人間関係が非常にリアルだった。肩書きだけじゃ測れないのが人の感情なんだよなぁとシミジミ。

幼馴染みだけど親友の元カノでもあり、なんでも語れる家族のような存在でもある榮倉奈々。
姉弟だけど淡い憧れの存在でもあり、男と女でもある小西真奈美。

小西真奈美との関係は絶妙にエロい。
三浦春馬と小西真奈美のラブシーンはヤバかった。そうそう、恋愛って視線の応酬で始まるんだよねと…お互いにしか分からない沈黙の会話。

お互いの奥底に仕舞い込んだ感情を確かめあったからこそ分かることもある。
そこにあったのは情欲に近い感情だったのかもしれない…だからもっと大切な姉弟と言う関係にお互いが納得して戻っていく。

ブレーキ役となったのが、家族より近い存在の榮倉奈々のような気がした。
彼女の存在がなかったら、姉弟には戻れなかったかもしれない。

姉と弟のキスシーンの後、なにが起きたかは観る側の想像に任されているが、恐らく男と女の関係になったのではないかと思う。
お互いに姉と弟で良かったと伝え合った後の光司の悲しげな表情がなんとも言えない切なさがあった。
あの演技だけで三浦春馬の力量を感じる。

情事の後に満たされない想いを抱く時ほど孤独なことはない。それは好き同士であっても起こり得ることで、男と女として先がない死刑宣告みたい瞬間だったりもする。

恐らく、先に姉に恋をしたのは弟の方で、届かない姉への想いを秘めて潜在的に意識させるような行動を取っていたのかもしれない。 それを受けた姉が、弟に女として反応してしまった…

それでも守るべき対象としての殻を破ることが出来ない。自分の持つ感情は大切な弟には相応しくない。
でも、異性として惹かれているひとりの女として、同世代の既婚女性に翻弄される姿は見るに耐えなかったのだと思う。

姉の小西真奈美が、大切な弟の隣にいるべき存在として榮倉奈々に拘っていた理由に、そんな自分の感情の後ろめたさもあったように感じた。

常にお互いを正面から見据えて会話をしていた榮倉奈々と三浦春馬が一緒にいるのは、とても自然なことのように思え、ラストに微笑ましく安堵する。

が、なにかヒトカケのパーツが足りない。
あの夫婦と関わりを持った時間が、光司の成長へと導く軌跡としての役割を果たしている描写が弱かった所為かもしれない。

おそらく榮倉奈々と亡くなったヒロとの関係にリンクしているんだと思うが、初見ではピンとこない。

ずっと榮倉奈々と向き合えなかったであろうヒロのデジカメを手にした歯医者の彼が、奥さんと向き合って写真を撮り合う姿に意味があり、ヒロの涙へと繋がっている。

榮倉奈々の本当の気持ちはどうだったんだろう?
高校時代に象に殺されたと言っていたが、原作を読めば分かるのか?

想像の域だが、榮倉奈々の初恋は光司だったのではないかと思った。
光司の姉への気持ちは子供の頃から気づいていたが、姉の想いにも気付いた時、気持ちを切り替えてヒロと付き合ったのかもしれない。

ヒロはそれに気付いていたから、カメラ越しに二人の姿をまるで見上げるように覗いていたような気がする。

深読みが止まらない。
噛めば噛むほど味が出てくるスルメみたいな映画だな。

光司の感情が見終わるまで分からない構想になっているから、静かな描写の連続なのにワクワクして観てしまうのだろうな。
光司が榮倉奈々を受け入れる気持ちを確かめるために、もう一回見てみるかな。

生々しい恋愛感情を思い出す映画だった。
素晴らしかった。
この監督の他の作品も観てみたい。