トンボのメガネ

スーパー!のトンボのメガネのレビュー・感想・評価

スーパー!(2010年製作の映画)
3.0
2017年10月レビュー(他サイトより移行)

一度は見たほうがいい!
けど二度は見れない作品。

色んなメタファーがあって、見かけより密度の濃い映画なので面白いのですが…
やっぱりビジュアルが苦手です。

最終的に辿り着いた感想は、宗教に盲信していく根幹への違和感が残りました。

主人公の持つヒーロー妄想が所謂キリスト教の信仰とダブらせてあると思うのですが…

最初は持ち合わせていたであろう理性らしきものが、自己陶酔が進むに連れてどんどん薄れていく。

自分の理念に従った行動が世間では犯罪になる。それを理解した上で自分を正当化しつつ潜伏もする。
そんな矛盾だらけの都合のよい思考回路が
まるでホラーのようでした。

最後、感動した人も多いみたいですけど…
1番疑問に感じたのが、人を傷つけた痛みは結局残らないんだなぁと。
どうやら自分が仲間と認めた者だけに対する痛みしか受け入れていないようだなと。

ラスト、壁に貼ってあった沢山の絵が
まるで偏った思考の集大成を見ているようで複雑な心境になってしまいました。

壁にあるのは自己犠牲や無償の愛の仮面を被った自己欺瞞の可能性もあるのでは?

主人公の根っこにある思考が、自分が見たいものしか見えていないような強烈なエゴイズムに感じました。

監督のジェームズ・ガンはカトリックの家庭に育ったようですが、自身が信仰というものに違和感を感じているのか?

もしくは、問題提起を狙った演出ではなく
ナチュラルな思考を表現したのか??


最新作のガーディアンズオブギャラクシー2で見せる痛快な殺戮シーンにも似たような所がありました。

昨日まで仲間だった輩を残酷な裏切りにあったという大義名分により、軽快に駆除していく流れがあるのですが…
無差別に膨大な人数をドヤ顔で殺していきます。

エンタメとして映像に見応えがあり過ぎるので、まるで当然のことのようにスルーしがちですが…
キャラ設定に違和感が生まれたシーンでもあります。

自分が認めた者だけに対する極端な愛情が
そこにボンヤリ見え隠れするため、終盤の自己犠牲による感動的なシーンにも若干の疑問符が生まれてしまう…

利己的に敵味方が明確に分かれるアメリカらしいシンプルな表現なんだろうか?

考え過ぎ?

本作ですが、難しいテーマに一石を投じているならば実に深い映画ですが…
そうでなければ、ちょっと恐ろしい作品ですね。