がぶりえる

エレファントのがぶりえるのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
3.7
淡々と事件に向かっていく物語

ひたすらリアリティにこだわりまくった淡々とした演出が続く。派手なカメラワークも音楽もない。他愛も無い会話を交わしたり、友達とご飯を食べたり、恋人と外へ出かけたり、趣味に没頭したり...そんな高校生達の普通の日常の裏で着々と進められていく「計画」を無機質に描く。普通の日常が一瞬にして悪夢に変わる瞬間。昨日まで同じ教室にいたクラスメイトに突然銃口を向けられる恐怖。銃乱射シーンの背筋の凍る恐ろしさ。

こういう映画で大事なのは「なぜ?」を考えること。
ます何より恐ろしいのは子供が簡単に銃器を手に入れられる環境。ネット通販で高校生でも銃器が買えるなんて...恐ろしい世界。ネット社会で危険なものが簡単に入る環境になっているのは日本も同じ、他人事ではない。
次に恐ろしいのは、銃器を発砲させた後の周りの人のリアクション。銃社会とは無縁な世界に生きる我々日本人からしたら明らかに異常なデカさの音が鳴っているのに、すぐに逃げようとしなかったり、何が起こっているかを見に行くために音の鳴る方へ近付いていったりする人々に驚いた。銃声が鳴っている状況を「異常事態」と思わない危険察知能力の低さと、事件が起きた時に取るべき行動を生徒がしっかり理解していない教育の甘さ。それがしっかり成っていればもう少し被害を抑えられたのでは?
そして、最後に考えるべきはやっぱりイジメ問題。これは日本でも無くそう無くそうとして今だに無くならない永遠のテーマ。イジメがそもそもあるのかどうかの判定が第三者からは難しいから、イジメを受けている人を救済するのが遅れて解決が難しくなる。でも、いじめられている子が助けを求めやすい環境がなければいけない思うし、塞ぎ込んで1人で抱えさせる様なことの無いような環境を作ってあげなきゃならない。高校生はまだ成長過程にある精神的に未熟な存在なのだから、学校はイジメの加害者と被害者共に守ってあげる存在であって欲しい。

パルムドール作品は毎回興味深い。今回も銃社会やイジメ問題について考える良い機会を与えてくれる重要な作品に出会えた。