これビンテージ

サマーウォーズのこれビンテージのネタバレレビュー・内容・結末

サマーウォーズ(2009年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【サマーウォーズ】

#ネタバレ
■ 曽祖母が電話をかけまくるシーン
90歳の女性が「仮想空間」「AI」が何なのかを具体的に理解するのは難しい。さらに、其れらが日本の危機にどう影響しているのかなど、具体レベルでは理解ができないはず。
しかし、曽祖母は其れらを抽象的な概念として、「日本の危機」「戦」と理解する。そして素早く、「自分に何ができるか」を瞬時に導き出し「行動」する。

状況の理解ができて、それに対応する事。
状況の理解ができず、対応を躊躇する事。
これらは比較的容易い。
しかし、
状況が理解できない中で、対応し行動を起こす事に、
その人間の「力」というものが試される。
その点で、曽祖母の対処の仕方は人間の理想と言える気がした。

■ 人を動かす事においてロジックは二の次?
知人に必死に電話をかける曽祖母。だが、その内容自体は「がんばれ」「諦めるな」「あんたならできる」と言ったものだった。
其れらは実利的な意味は何もない。ただ感情をぶつけているに過ぎない。よって、捉え方によっては「根性論」とも言えるのだが、
そもそも人間が動くor動かないという点において、意味や論理、理由など関係が無いのではないか?

生きる意味、頑張る理由。つい我々はここを重視してしまう。
しかし、生きる/頑張る事においてもっとも重要なのは、
「生きよう!」「頑張りたい!」という自分を突き動かす「感情」なのではないか?
そして本来、コミュニケーションとはそういう「感情のやりとり」なのではないか??

■ なぜワビスケは「自ら疎まれる道」を選んだのか?
これは私の推測に過ぎない。
ワビスケは曽祖母の土地を勝手にお金に変え、10年間姿を消す。それにより、親族から疎まれる存在に。
なぜそうする必要があったのか?
それはやはり、ワビスケが「養子/妾の子」である自分の存在価値をずっと問い続け、悩まされ続けたからではないだろうか?
「家族」として認められるために、自分に何ができるのかを問い続けてきた。そして陣内家をもう一度最盛期に戻すため、AIの研究を必死に続けてきた。
それが米軍からのオファーという成果に結びつき、その報告を楽しみに帰省してきたように思える。

他者を理解するという事において、その行動そのものよりも、それに至るまでの背景や心境の変化を想像し推測する事が重要である。
結果に対する善悪を判断する事と、その結果の経緯を知る事は分けて行う必要がある。

■ なぜ曽祖母はワビスケを殺そうとしたのか
英文メールを見せながら微笑みかけるワビスケに、一瞬曽祖母の表情が崩れる。
これは、「最愛の子供への愛」とそんな我が子の犯した「大罪への責任感」とが葛藤していたように見える。
そして、武家の人間としてどう対処すべきか考えを巡らせる。そして、親としての愛よりも1人の人間としての「ケジメ」をとる事にする。

人間は常に複層的な関係の中にある。
家族と自分、地域コミュニティーと自分、職場と自分…
様々なレイヤーの中に複層的に存在している。
その中で、どの層と価値基準を選ぶのかという所に、その人間の本質がある気がした。