サンチャイルド

レスラーのサンチャイルドのレビュー・感想・評価

レスラー(2008年製作の映画)
4.3
「転落」って言葉は、男に90%の恐怖と何故だか10%の誘惑を与えてくる。
それは「自分が輝ける世界でなら、壊れたっていいんだ!」そんな気持ちにさせてくれるからだろう。好きを突き詰める勇気と愚かさ。そんな美しすぎる滅びの物語。
この手の転落劇には、肉体を晒し、人を恍惚へと導くプロレスとストリップという舞台にかなうものは無い。

テリーファンクという、実在のカリスマ、アイドルレスラーが、この主人公のようなインディプロレス団体への参戦、ハードコアレスリングをも90年代にやっていた。
当時、彼が何故、ああいった肉体もプライドも過去の栄光をも傷つけるような事をしてんだろうと思ったが、たぶん、この主人公のように、人を悦ばせる仕事という麻薬に取り憑かれたんだろうなぁ。金だけじゃなくて。
エンターテイメントは、カッコいいものだけを魅せるものじゃない。その人の堕ちていく・老いていく姿を晒すのも心を打つものだと、その幅の広さに気付かせてくれる。