ちゅう

レスラーのちゅうのレビュー・感想・評価

レスラー(2008年製作の映画)
4.1
自分が存在していてもいいと感じられる場所。
それを居場所と呼んでいて、人はそれを必要とする。
その居場所を奪われるというのは、闇の中に放り出されるようなものなんだと思う。


男の生き様をまざまざと見せつけられた。
栄光を掴んだ男でさえこんなにも寂しいのだ。
この寂しさは歳を重ねるごとに理解できるようになってくる。
多分この種の寂しさから完全に逃れられる男はそういない。


全てをかなぐり捨てて掴んだもの。
何があっても手放せなかったもの。
それを失った時求めるものはそばにいてくれる誰かだけど、その時にはもう誰もいない。

観る人によっては自業自得の人生だと思うかもしれない。
いろんな人を傷つけてしまっているところはダメだな、と僕も思う。
けれどこの生き方には少なくともひとかけらの美しさがある、と僕は思う。
それを認めることができないともう誰も許すことができなくなる、そんな気がする。


歓声の真っ只中にいる彼の視線の先に彼女がいなかったのは、彼の生き様を象徴しているようで切なかったけれど、自分の居場所で最後までかっこつけられたのだから、彼の人生としてはベターだっただろう。


どう生きたって寂しさから逃れられないのだったら、どう生きるか。
自分の居場所はどこなのか。
エンドロールの余韻の中で、この問いが膨らみ続けている。
ちゅう

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