ちゅう

パリのどこかで、あなたとのちゅうのレビュー・感想・評価

パリのどこかで、あなたと(2019年製作の映画)
3.9
人はほんのささいなことからでも自分を抑圧しはじめてしまうし、それによって意識的にも無意識的にも自分を責めてしまう。
他人と関わってもそんな自分を投影してしまってうまくいかない。
自律した自由な個人として生きていくためには、そうした抑圧に気づいてそこから解放されるための行動を起こすしかないのだろう。


孤独な都市のなかで、いびつな毎日を送る二人の日常。
交わりそうで交わらない二人だが、それぞれに自分を抑圧しているものに気づいていく。


オープニングにしても、室内の装飾にしても、住んでいるアパートメントを俯瞰してもおしゃれでかっこよかったけど、話としては非常に大人で渋いなと思った。
劇的な出来事はそれほどないけれど、主人公二人のそれぞれの行動が静かに二人を変えていくところは身に染みていくような説得力があってよかった。
人生にとって、インパクトのある出来事なんて実は些細なことだったりするし、運命だってちょっとしたきっかけとタイミングだったりする。
でも、それに気づけるかどうかが人を幸せにするかどうかを決めるし、自分が負のものに囚われているとそれに気づくのは難しい。
大切なものを大切にするためには、自分の抱えている問題を解決しなければならないと教えられているような気がした。


物語で起こる出来事が伏線となって、ラストの後の二人の未来が明るいことを示唆していて、観終わった後の気分はほんのりとあたたかだった。
そのときは小さなことだと思ってしまうようなことでも大切にしていきたいと思える素敵な映画だった。
ちゅう

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