みかんぼうや

あなただけ今晩はのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

あなただけ今晩は(1963年製作の映画)
3.9
【もはや“鉄板”の極上エンタメ性×騙し、というビリー・ワイルダーの黄金方程式が炸裂!脚本の妙味に酔いしれる至極のラブコメディ!】

「情婦」「アパートの鍵貸します」「お熱いのがお好き」に続き、私の中でのキング・オブ・エンターテインメント・ムービーなビリー・ワイルダー監督4作品目。“エンタメ性×騙し”という彼の作品の黄金方程式が今作でも炸裂!相変わらずの超練り込まれた脚本は、とにかく「巧い!」と唸らされることの連続。前述3作品に比べると、人気、知名度ともにだいぶ落ちるようですが、作品のクオリティは全く引けをとらず・・・どころか、個人的には「アパート・・・」、「お熱いのが・・・」より本作のほうが面白さや展開の巧さを感じて好きな作品でした。

主人公が好きな女性にバレないように変装して、その女性と接していく・・・というフレームは、「お熱いのがお好き」とかなり似ているところが大きいけど、その動機は本作のほうがより“純粋”に見えて、少し切なさや虚しさも感じられて個人的にはこちらのほうが好き。とはいえ、骨格にあるのはあくまでも“コメディ”なので、切なさと言ってもヒューマンドラマ的な感動とかそういうものではないんですけどね。基本的にはあくまでニヤニヤしながら観る作品だと思うので。

あと、酒場のマスター!とにかくキャラが立っていて大好き。どんな経歴の持ち主なのよ?という、実はあらゆる職業を経験してきた猛者なわけだけど、もしかしたらそれすらも嘘かもしれない。この男のお陰で、主役の男女2人のラブコメがさらに面白くおかしくなっていい味出してる。かまいたち山内ばりの「余談だけど・・・」の連発も妙にツボりました(笑)。

ビリー・ワイルダー作品を観るたびに思わされる「絶対的に面白い脚本があれば、予算をかけたド派手な演出も大がかりでスケール感満点なセットもCGもいらない」(当時はそれができなかった故の脚本勝負だったと思いますが)という観終わった後の感覚は本作でもバッチリ健在で、私の中での「ビリー・ワイルダー作品に外れなし!」はまだまだ続いております。
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