ガンビー教授

ジャッキー・ブラウンのガンビー教授のレビュー・感想・評価

ジャッキー・ブラウン(1997年製作の映画)
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今や9作を数えるタランティーノをどう捉えるか、議論の余地は少ないかもしれないが、本作に対する評価によってその人がタランティーノをどう見ているかが現れるような……。

それまでの2作はタランティーノの最高傑作として名が上げられることも多いが、良くも悪くも観客をからかうトリッキーなところがあり、懐疑的な評価も生んだ。3作目のこれに至って、タランティーノを信用し直した、という人もいるようだ。

確かに時間軸をいじる演出もあるにはあるが、それは「お得意のアレですね」といった使われ方(要するに、映画の枠組みを解体するような)でなく、視点を分散させるための極めて真っ当な用法であり、それも含めて演出の端々にむしろ監督の生真面目さが垣間見えると思う。

現役の監督で「後期」などと言われる人も珍しいが本人の言葉を信じるならあと2作品で長編映画監督からは手を引くという。後期に突入したタランティーノの、現時点における最新作『ヘイトフル・エイト』も、まさに生真面目さが現れた映画だったと思っている。この作品のように、後から見返したときターニングポイントだった、と感じられる作品になる気がする。

初期タランティーノの、地味ながらもフィルモグラフィの中で確かに利いている1作、という印象。




本作におけるロバート・デニーロの使い方が好きだ。わざわざデニーロを使いつつ、咳き込んだりさせるばかりで見せ場がない。サミュエル・L・ジャクソンが投げかける「お前には失望したよ……昔の俺たちはあんなにイケてたのに」という台詞の哀愁と言ったら。
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