むさじー

ジャッキー・ブラウンのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

ジャッキー・ブラウン(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<クライムと大人の恋、漂う哀愁>

タランティーノの長編3作目だが、本作は時間軸を動かすようなこともなく、ややコメディタッチでバイオレンス色は控え目、少し疲れた大人の恋を絡めてウェットな味わいがある。
クールで芯は強いが生活に追われる44歳独身女性と、仕事に疲れ老いも感じている56歳男性の、出会いから別れまでのプラトニック・ラブがいい。
保釈屋マックスは、留置場を出たばかりでひどい顔のまま、疲れ切って歩くジャッキーをじっと見つめ、心奪われる。
普段は自立したカッコいい女が、無防備に弱さを晒す、そんな瞬間に恋心が芽生えた。
そしてラスト、大金を手にしたジャッキーはスペインへの高飛びにマックスを誘うが、マックスは申し出を断り、別れのキスをして見つめ合い、そこに仕事の電話が入る。
後で掛け直してと電話を切るマックスだが、初老の男は後ろ姿でグッとこらえる。さて、恋の行方は?
少しだけ別れの余韻に浸って耐えるのか、ジャッキーを追ってスペインに飛ぶのか、という含みを持たせたエンディングは、オジサンの深い迷いに感情移入を誘う。
ストーリーに目新しさはなく、同監督としては異色の地味さだが、役者が皆いいし、音楽もハマっている。
何度観ても心地よくて、ビターな味わいを持った中年向け映画である。
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