Kamiyo

OUTのKamiyoのレビュー・感想・評価

OUT(2002年製作の映画)
4.0
2002年 ”OUT(あうと)” 監督平山秀幸
直木賞受賞の女流ミステリー作家、桐野夏生による同名小説。
こんなブラックコメディを映画にできないなって思えるくらい
衝撃的で、そして面白い。
笑えないって思うだろうって感じなんですけど、笑えるんです。

助け合って生きていこうとする女たちの性、本能。
「OUT」という本題は、負け、失敗、降参、諦め だけではなく
"閉塞からの脱出“をも意味するんだよね。

東京郊外にある弁当工場に始まる。
工場の深夜パートで働く女性たちは、大抵は訳アリだ。
映画は、そんな女性たちの中の、4人に照準を合わせる。

主人公である雅子(原田美枝子) の夫は、リストラされて無職
息子とはコミュニケーションが取れず、家庭内で家族離散状態。

工場で「師匠」と呼ばれるベテランのヨシエ(倍賞美津子) は
要介護の老いた義母を抱えている。

独身の邦子(室井滋) は、その浪費癖によってカード破産寸前。

夫のギャンブルと家庭内暴力に悩む、弥生(西田尚美) が、はずみで夫を絞殺してしまったことから物語が動き出す・・・
慌てて仲間を巻き込んでいく

西田尚美の軽薄な主婦像が最悪なのかと思っていたらいったんは慌てたもののきっちりと段取りを決めて死体を処理していく原田美枝子の冷静さや金に目がくらんで手伝うことになる倍賞美津子
目先の金とブランドしか興味のない室井滋といずれ劣らぬヒネた女たちが暴走しはじめるおかしさ。

印象的だったのは、主役の雅子(原田美枝子)の
クールな美しさと凛々しさ。
(水着姿のサービスカット?なんてのもありましたが・・・(^^;)
怪しい金融業者の事務所に乗り込んで
話をつける姿の格好のいいこと。
やりこめられた金融業者の十文寺(香川照之)が
逆に惚れてしまって、「イケてます」と言うのにも納得です。(^^)
あの存在感に対して残念ながら声質の弱い演技者なんだけど
終盤、産気付いた西田尚美に残す言葉の意気は・・・そうだな
あれで西田は初めてまともな受け応えをする。
あそこ、すごく良かった。

間寛平が妙にはまり役でびっくりしました。
あの間寛平と思わなければ、凄みを感じました。新たな一面です

亭主をバラバラにして生ゴミに出したいって
妻たちは話し合っているのさ。
しかし彼女たちはサイコでもなければそれほどの悪女でもない。
いってみればどこにでもいる小金を貯めている主婦といってよい。
その主婦たちも一歩間違えると大の男でさえ目を背けるようなことを
平然とこなしていく。
弁当工場での手際の良さで解体処理していく様子は
まさにコントの一場面といってよい。

男の自分から見てこの映画、女優たちが男たちへの敵愾心を本心で演じているのを感じてしまうから、ちょっと恐ろしくなる。
男性への生理的反感が隠しようもなく共演者たちに現れる。
そしてそれを嗤い(わらい)あう女たち。

とりわけ原田美枝子が腹の据わった男前ぶりで見事!
オーロラを見させてあげたいナ。
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