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真夜中のピアニストのjonajonaのレビュー・感想・評価

真夜中のピアニスト(2005年製作の映画)
3.7
『預言者』でクラクラするほど当てられたのでジャックオディアール監督作品を探し、最近ようやく鑑賞。
単純に面白いとは言いがたいけど
胸に余韻を残す作品。

空き家とかしたビルに不法滞在する浮浪者たちを、ネズミを叩き出すように追い出す闇不動産屋をしてるチンピラマンことロマンデュリス。韓国なら城塔という仕事が近いのかな?彼にはかつてピアニストになるという夢があった。
偶然かつての業界知人に出会いコンテストを勧められたことから再び夢が再燃。夜には浮浪者の叩き出しをしながら、昼は言葉が通じない中国人の女性講師の元でピアノレッスンを始める。

しかし、そんな中主人公の父が危ない組織の連中に目をつけられたり、友人の浮気口実に付き合わされたり、相変わらず不法占拠者を叩いたり『夜の世界』の堕落して哀しい人生が彼にしがみつく。それは彼が長らくピアノの夢から逃げてどっぷりと浸かってきた沼から抜け出せないように、夢に近づこうとするほど足元を取られる。それにそもそも直情的で流されやすいこの男は、マフィアの愛人に手を出したりどうにも自分で歯止めが効いてない…。

ピアノや芸術の世界って多分センスと積み重ねだと思う。突然本気になっても上手くいかないのも現実…主人公はそれでもまた昔の自分に戻りたいと思ったんでしょうね。なんだか嫌いになれない男です。
マフィアの愛人にアプローチをかける時も、トイレの個室に上からよじ登って話しかけるというトンデモ野郎ですが、思わず愛人の彼女は笑ってしまう。かなりバカで真っ直ぐで、優柔不断…血塗れとなった後の、祈りのようなラストには中々痺れたな。
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