バナバナ

路上のソリストのバナバナのレビュー・感想・評価

路上のソリスト(2009年製作の映画)
4.3
これも実話を基にした作品だそうです。

タイトルからすると、ナサニエルを演じているジェイミー・フォックスが主人公かと思いきや、そうでもない。
ダブル主演なのだろうが、新聞記者のロペス(ロバート・ダウニー・Jr)の哀愁もすごかった。

ロペスはロサンゼルスでは誰もが知っている、新聞のコラムニスト。
離婚して一人暮らしだが、新聞社のリストラの対象にはなってないし、ナサニエルの記事を書いた事によって、新聞の賞まで受賞する。
しかし、彼は別れた息子と上手くいっていないし、孤独だし、とにかく不幸せそうに見える。

普通の人は、ナサニエルが2本の弦のバイオリンで演奏していても、気にも留めずに通り過ぎるだけだったが、普段からどこか満たされない気持ちを抱えていたロペスは、その音色を聞き逃さずにキャッチする。
ロペスは取材の為にナサニエルに近付き、彼の人柄を知るうちに交流を深めるが、本当は人と深く付き合うのが怖い。

しかし、それを元妻から、
「何をしてあげようというんじゃない。ただ、友達になればいいんじゃないの」と諌められる。
この奥さんは、今もロペスと同じ新聞社で働き、編集長なのか上司でもある。
ロペスは一匹狼なので自分の記事の心配をするだけでいいが、
この奥さんは管理職なので、新聞の購買力が落ちている今は、部下のリストラもしなければならないし、ロペスよりストレスが多そうに見える。
だが、この奥さんが「今度は(私から逃げたみたいに)逃げるな」と暗に言うところに、重みがあったw。

ロペスも夫婦でロサンゼルスに来た頃は、「俺の筆で社会を変えてやるんだ」と、正義感溢れる理想の高い人だったみたいだが、今は「金の為に書いている」と言い切る。
彼も、社会的には順調に見えても、満たされない何かを抱えて生きているんだな、と思う。
彼がナサニエルの為に、空回りしてたけど「何かをしよう」としたのも、この虚しさを埋める為だった様な気がする。

私はナサニエルよりも、この記者さんの方が妙に気になった。
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