ヤンヤン少年の大冒険!ではなくて、ヤンヤン少年が家族達の一夏のはじっこに立って、彼らをじっと見つめている感じ。
お姉ちゃんは夢に見た初恋とその終わりを、叔父夫婦は結婚・出産・すれ違いを経験し、母は祖母の介護に疲れ 現実から逃げ出すように山寺へ、父は初恋の女性との再会をきっかけに青春時代と現在の狭間で揺れ動き、祖母は家族の誰にも返事をしないまま 生を終える。
命の誕生~死の瞬間まで、ヤンヤン少年がこれから辿ることになるライフステージを、家族一人一人のストーリーを通して重層的に描き、ヤンヤン自身もちょっぴり成長する姿を見せてくれるという、他に類を見ない見事な構成。
画面はいつもフィルムのざらざらした質感で、色鮮やかだけどすすけていて、台湾のムンとした湿度と生暖かい風が薫ってくるよう。
幼いヤンヤンには何度もハッとさせられるし、お姉ちゃんが失恋時に祖母に語りかける台詞も印象的。唯一の日本人キャスト、イッセー尾形さんの存在感も一際際立っています。
蒸し暑い夏の夜に観たい映画No.1です。