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他人の顔のryoのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
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得難い傑作。

繰り返し観たくなるイメージの宝庫。造り物の手、レントゲンの頭蓋骨。透過する診察室のイメージ(ウィトルウィルス)。岸田今日子のナース。カメラの転倒と関係の転倒。「化物」の群衆。武満徹の気配の音楽。

カフカ的状況の中に置かれたドストエフスキー的人物。安部公房は“中立地帯”、世界の狭間にあるような場所に落ち込み、自らも境界性を帯びた存在を描くことに、執拗な関心を寄せていた。顔を喪うことによって自己への否定性に規定された男は、あらゆるものに対して痒みのような苛立ちを感じ、それを発散せざるを得ず、それに対して周囲の者が見せる気まずい表情は更に彼の苛立ちを掻き立てる。仮面を手に入れた男は、自らの妻を他人のふりをして誘惑するという計画に取り憑かれて…。
安部公房や勅使河原宏や大江健三郎の60年代。
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