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グッドモーニング・バビロン!のtakのレビュー・感想・評価

4.0
聖堂の修復に携わる建築士の息子ニコラとアンドレア。「いかなる時も平等であれ」という父の教えを胸に、二人はアメリカへ渡る。しかし理想とする建築の仕事に就くチャンスはない。そんな折、サンフランシスコ万博が開催されることになる。二人はイタリア館建築の一行に紛れて仕事を得た。万博で注目を浴びていたのは映画監督D.W.グリフィス。彼は次に撮る大作でバビロンの宮殿を再現するセットを建築する。その為に万博でイタリア館を建てたスタッフを雇いたいと言い出した。二人の兄妹は棟梁になりすまして、グリフィスの待つハリウッドへ。そしてグリフィス監督の新作「イントレランス」のセット建築が始まった。

デイミアン・チャゼル監督の「バビロン」で、主人公の一人マニーは映画に携わりたい気持ちを「大きな存在の一部になりたい」と表現した。ニコラとアンドレア兄弟は映画に魅せられて就いた仕事ではない。イタリアで父から学んだ技術を活かす場を探していた結果、流れ着いたのがハリウッドだったのだ。彼らの仕事はグリフィスに認められて、映画史に残る作品の一部となった。セットは永遠に残るものではない。古代バビロニアの幻の都と同じように消え去ってしまうもの。でもフィルムの中では永遠になる。

そんな二人はハリウッドで幸せをつかむのだが、次第に父の教え通りの平等ではいられなくなってくる。それは映画公開と同時期に世界を包んだ戦争によるものだった。

家族を描いたイタリア映画は名作が多い。この映画の主題も兄弟の絆で、ハリウッドでのエピソードは一部分にすぎない。しかし強烈な印象を残してくれるし、その幸福から一転、戦争で引き裂かれる二人の姿が胸に迫る映画だった。

これも改めて観たい映画の一つ。
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