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夏時間の庭のKSatのレビュー・感想・評価

夏時間の庭(2008年製作の映画)
3.6
子どもたちが庭を走り回る場面から始まる、どこか印象派のような本作は、ある意味、「東京物語」に対する回答のようでもある。

「東京物語」では老いた側である両親が東京にいる子供たちに「会いに行く」ところから始まるのに対し、この映画では冒頭、子供たちが母親に「会いに来る」。
しかしながら、その後の子供たちの様は一緒で、それぞれが仕事や家庭、あるいは経済的な事情で親の存在を忘却し始めてしまうのだ。
この映画の場合、母親が死んだ後の「家」や「美術品」が「東京物語」における笠智衆のような役割を果たしているようだが、相続するか売るかという経済的な壁がより強調されている。

さて、「東京物語」における原節子は、この映画の場合、誰なのか?
それが明らかになるあのラストシークェンス。もはや、これを撮るために本作を作ったのでは、というほどに美しく、幻想的ですらある。
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