このレビューはネタバレを含みます
強烈な一本です。
何気なく取り止めのない平坦な日常を過ごすのは案外容易でない。
そこには必ずといってよいほど、大きな空洞が存在しているから。
人生を長く生きていけばいくほど、その空洞は大きなものとなって目の前に立ちはだかる。
この空洞は、誰かに埋めてもらうこともできなければ、見て見ぬフリすることもやがて難しくなる。
その空洞は自分自身の欺瞞性や、過去の様々な喪失、失態。現実のカオスによる眩暈や吐き気、そういったものが全部詰め込まれていて、見るに耐えないグロテスクさを孕む。
神は、その御心によって全てをお許しくださると云うが、その絶大な力故、ときにこの空洞をさらに拡大させる側面をさえ持つことがよく分かる。
現実と向き合うということは、空洞を見つめることなのでしょうか。暗いどん底から見える景色は、どんなものなのでしょうか。
そこへ陽は差すのでしょうか。
自分は果たしてどんな姿をしているのでしょう。
目には見えない景色をじっくり炙り出す一本でしょうか。